③ 「朝鮮籍」の在日コリアンの地位が曖昧で、人権がないがしろにされている
在日コリアンが韓国籍を選択しない場合、自動的に「朝鮮籍」となります。この「朝鮮籍」は朝鮮の国籍を意味するものではありませんが、その位置づけの曖昧さが差別の温床となっています。また、朝鮮学校に対する補助金の削減や、高校無償化・幼保無償化の対象外とされたことは、社会における在日コリアンへの差別やヘイトスピーチを正当化する要因ともなっています。
Q:日韓基本条約が在日コリアンに与えた影響を教えてください
A:かつての植民地支配の結果として、在日コリアンは1952年4月28日から、民事局長の通達で本人の選択の余地なくそれまで保有していた日本国籍から離脱させられ、国籍なき、法的地位の不安定な民族的少数者とされました。ところが1966年の日韓法的地位協定によって、外国人登録(当時)の国籍欄に「韓国」と記された者だけが「協定永住」を申請でき、申請期間を5年間(1971年1月16日まで)としました。そのため、当初は約7割の在日コリアンの国籍欄には、国籍を意味しない「朝鮮」となっていましたが、「朝鮮」から「韓国」への国籍書き換えキャンペーンが民族組織団体を上げて繰り広げられました。その結果、在日コリアンの間に国籍書き換えについて賛成派と反対派で分裂・対立が起こり、申請締め切り後、「韓国」「朝鮮」はほぼ半々の結果となりました。日韓基本条約はその意味で、在日コリアン社会に法的地位(永住許可の有無)で38度線が敷かれることになったといえます。
Q:日本が未だに朝鮮と国交がないことは朝鮮籍の在日コリアンにどのような影響を与えていますか?
A:その最たる影響とは、「朝鮮籍」のままだと、旅券(パスポート)を保持することはできません。つまり、人間として保障されるべき移動(旅行)の自由が権利として保障されず、日本から海外に出国する場合は、その度に煩雑な再入国手続きを経なければなりません。例えば、「朝鮮籍」者が海外へ出国中に事故や災難などに遭遇した場合、日本人は日本領事館に、そして「韓国籍」者は韓国大使館に救援を求められますが、「朝鮮籍」者は救援を求めるべきところがない存在に落ち込むことが想定されます。「朝鮮籍」のこのような制度的に不安定な立場とは日本社会で社会生活をする上でも、様々な領域でその人に不便を被らせることになり、おしなべてそのような状態が朝鮮人に対する日本社会の民族差別を温存・再生産し続けることになっています。従って、日本が朝鮮との国交正常化を推し進めない結果、そのような不利益と差別的現実が放置されることとは、日本の植民地支配責任放棄の最たる結果であり、韓国政府もこの問題について大きな関心を向けることが期待されます。
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